マグロの種類をどれだけ言えますか?
マグロ全体が絶滅種?
2009年から各メディアでクロマグロが将来的に食卓から姿を消しつつ有るとのニュースを目にするようになりました。2010年3月、ドーハで開催中のワシントン条約第15回締約国会議では地中海産クロマグロ(本マグロ)の全面禁輸案がモロッコを中心に欧州で提案されていましたが2/3の否決となりました。(2010・3・18現在)
一部メディアでは「マグロの絶滅」との見出しを掲げ誤解を招く報道表現も見受けられました。私自身も2009年の暮れには恥ずかしながらマグロ全般が規制させれてしまうのかと誤解もした事がありました。今回のワシントン条約締結の報道を切っ掛けに、まずはマグロの漁種について学んでみました。
日本で食べられている刺身用の主なマグロ-5種類
- クロマグロ(英名:Bluefin Tuna)
- 大西洋、地中海、日本海近海でとられる海の黒ダイヤの異名をもつ最高級品。通称「本マグロ」と呼ばれ高級寿司店などに主に卸される。刺身類に適したマグロの中で一番大型(平均全長約3m)。世界全体の約8割を日本が消費していると言われる。
- ミナミマグロ(英名:Southern Bluefin Tuna)
- オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ沖など南半球海域に分布。通称「インドマグロ」と呼ばれクロマグロに次いで高級品とされる。平均全長約2m。世界全体のほぼ10割(全て)を日本が消費。
- メバチ(英名:Bigeye Tuna)
- 温帯〜熱帯海域に広く分布。目が大きいことからメバチの名がついたと言われる。通称「バチ」。値段も手頃で一般的に店頭や宅配寿司で販売されていのが本種であることが多い。世界全体の約6割を日本が消費。
- キハダ(英名:Yellowfin Tuna)
- メバチと同じ海域に分布し、漁獲量も多い。別名「キワダ」。カラダが黄色味を帯びており、脂肪が少なく締まった肉質で刺身や缶詰などでも食される。世界全体の約2割を日本が消費。
- ビンナガ(英名:Albacore)
- 世界中の海に広く分布し、別名「ビンチョウ、トンボマグロ」。長い胸びれが特徴。本来は油漬けの缶詰に利用されていたが、最近では刺身にも利用されスーパーでも出回っている。世界全体の約2.5割を日本が消費。
【参考:nikkei4946.com|マグロの漁獲規制について知る!】
クロマグロの養殖は天使か悪魔か
地中海では96年よりマグロの肥育養殖が始まり、今では大西洋のクロマグロ産業にも広まったと言われる。現在、地中海だけでも70ヶ所のマグロ養殖場が登録されているが、ここにその海域で捕獲される天然マグロが運ばれ半年から1年かけて肥育されます。
種の絶滅から保存に向かいながら既存の水産業を維持する一つの方法としてマグロの養殖があります。
マグロの"養殖"と"畜養"の違い
"養殖"とは本来、卵の段階から成魚(大人の魚)になるまで人間が育てることですが、人工孵化から成魚まで完全養殖に成功しているのはミナミマグロの人工孵化に成功した近畿大学など一部で、商業出荷はまだ少量になります。
"畜養"とは、幼魚もしくは成魚を捕獲しそれらを生け簀でエサを与えて育てるのが畜養といいますが、JASの規格では、畜養を養殖と表記することを認めています。
今回のクロマグロの主な生産地である地中海の畜養は、抱卵期に達しない未熟な魚まで捕って乱獲や違法漁業の問題も浮上してきました。ある意味、この早期乱獲がクロマグロの個数を減らしている大きな要因との見方もされています。
また、畜養マグロは、1kgの体重を増やすための肥育に約10kg〜20kgのエサが必要となり海水の汚染問題や生態系の変化など対応すべき課題も深刻と言われています。
【参考文献:クーリエ・ジャポン4月号|世界の「食料争奪」戦争】
マグロと日本の食文化
継続する未来のために「吾唯足知(われただたるをしる)」
マグロを本格的に食べるようになったのは江戸時代と言われ、日本沿岸で穫れたマグロを漬けにして保存できるようにして食していました。また現在ではトロが珍重されていますが、昭和前期までは赤身が高級として珍重されていた事もよく知られた話しです。
継続的な食文化を守るためにも、時には「足るを知る」という禅の思想を思い起こします。人は裸でこの世に生まれていろいろな知恵と物質を身につけて成長して来ますが、欲望は更なる欲と現状の不満を生み続け、いやされる事の無い渇きのように常に多くを求めてしまいます。
今回のワシントン条約に関する決議の結果は政治的、経済的にも複雑な様相を秘めてるかと思われますが、クロマグロの畜養問題やマグロの種類に関する知識などはこれを機に、日本人として食文化を再発見する良い機会とも考えられます。今度、スーパーに行ったら刺身のラベルを確認し、何処からやってきた何と言うマグロか確認してみるのも面白いかもしれません。
できればいつまでもマグロを食べられる日常であることが幸せですね。