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農村ワーキングホリデー・ガイド

2010年06月11日
農村ワーキングホリデー・ガイド

農村ワーキングホリデー初のバイブル

1990年代後半に、宮崎県の西米良村や長野県の飯田市で始まった"農村ワーキングホリデー"。有料で行われている収穫体験など、観光の一部として位置づけられる"グリーンツーリズム"に対して、"農村ワーキングホリデー"とは、都市部の人が余暇を利用して農村などでボランティアとして3泊ほど泊まり込みながら農作業のお手伝いをする仕組です。地方自治体などが中心となって進めてきた地域復興施策として、全国に"農村ワーキングホリデー"が浸透して来ました。

あらかじめ決められた一部の作業をお金を払って行う"体験農園"とは異なり、その時々の農作業を生産者さんと寝食をともにしながらお手伝いを行うこの仕組みは、表層的な観光では味わえない自然の中の"感動体験"があります

鈴村源太郎氏

著者について

著者である鈴村源太郎氏は、農林水産省の農林水産政策研究所主任研究官として、農業経営学を専門としつつ、都市農村交流論なども造詣が深く、実際に全国の農村ワーキングホリデーに足を運びながら、飯田市では実際にワーキングホリデーに参加もしています。本書は、入念なフィールドワークに基づいた、単なる机上の研究書ではない、分りやすい言葉で体系的にまとめ上げた"農村ワーキングホリデー"に関する初のバイブル(=良書)と言えます。

本書の内容

内容は、この仕組みの成り立ちから時代背景、その特徴の解説、現状の模様を参加者と受入れ側の視点で整理した課題、参加者の雑談会やアンケート調査などのデータ、そしてなんといっても素晴らしい全国の農村ワーキングホリデーをまとめた巻末一覧は、恐らく現時点でこの著書でのみ見れる丁寧にまとめられた貴重な資料です。

"ワーキングホリデーの原点は、農村でのありのままの作業に参加することを通じて、農業の現場から「感動」を得ることにあります。(中略)そこで得られた感動は、参加した人の「その後」に深く影響し、もう一度農村へ駆り立てる原動力となって、農村への関わりを深めるきっかけになったり、農村という地域の理解に繋がったりと、さまざまな効果をもたらしています。(本文より)"

著者の鈴村氏とは、実際に私が福島県の喜多方市でワーキングホリデーにはじめて参加していた時に、インタビューに訪れてお逢いする機会がありました。はじめてお話しを聴かせて頂いた時には、グリーンツーリズムもワーキングホリデーも、私にはその言葉ははじめてのものでした。鈴村氏は丁寧に説明し、行政でもワーキングホリデーの機能を10年近く調査し取組みを観察し、今後の農や地域復興に役立てていければと語ってくれました。

著書の感想

本書は、農業に興味のある方や、実際に農業を始めようと考えてる人、自分の人生という時間をリフレッシュしたい方などの参加する側と、農村の受入れ側である、生産者や地方行政、地域復興を考えてる自治体などの両者にお薦めです。

1997年の初の農村ワーキングホリデーが始まって以来、著者の調査では参加者の延べ人数は、6,879名。農村ワーキングホリデーの取組みは、その広がりが序所に全国へと広がり、導入期から一般市民に広がる展開期へ向う、端境期を迎えていると私も感じています。現状では言葉としての認知は、ワーキングホリデーといえば海外で短期就労の仕組みである方が広く知れ渡っており、検索エンジンでもそのままでは農村のワーキングホリデーの情報にはたどり着けません。ネットで情報収拾するも、呼び名も様々に存在し、「援農」、「縁農」、「農業ボランティア」など...。

呼び名はともかく、このすばらしき余暇の過ごし方は、現代人、特に都市部の住民に素敵なそよ風を心に送り込み、農村部には新たな明かりを灯すことでしょう。私にとっては、"農村ワーキングホリデー"を体系立てて、その歴史や現状、受入れ側、参加側の課題と今後の姿を分りやすくまとめてもらったこの著書は、ネット上で情報が分散されている現状からも、非常に役立つ"農村ワーキングホリデー"バイブル(参考書)です。特に、巻末の全国の農村ワーキングホリデーの一覧と解説は、今後、参加に興味をお持ちの方には必見です。

                
  

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