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みらいバンク_#1 佐渡島 岩首

2010年03月10日
佐渡島 岩首 空まめ展望台からの空と月

佐渡島の小さな山間の天たかき集落−岩首

"うみ"、"やま"、 "そら" が繫がる世界

佐渡島 岩首 棚田から見る夕暮れ時の日本海

北陸の日本海にたゆたゆと位置し豊な自然環境に恵まれる佐渡島。そのいにしえより文化人や貴族が本州より渡され、そこには本土と変わらない豊潤な文化を築いてきました。
焚火能、無名異焼、裂き織りなど日本の文化を独自に継承して来た佐渡島。
日本の良き姿を今でも島に残す景観は、高齢少子化に伴う人口減少の波に少しずつ変化の足音をしのばせて来ています。

佐渡島 岩首 地図

佐渡島の南側、小佐渡と呼ばれる前浜地区にある「岩首」は、なだらかな山並みと透き通る碧い海にいだかれた人口146人(2009年現在)、戸数62戸の小さな集落。この岩首には、私たち日本の里の原風景が残されていました。

人の暮らしと景色が融合しあい、木のやさしさが静かに語りかける町なみ岩首。山へと続く坂をゆっくりあがりながら天たかい空を見上げると、その何処までも続く空は宇宙にまで気持ちを導く蒼さ。振返ると視界の裾野にひろがる棚田は、その先に新たな生命の息づく海原へと続く。ここは、"うみ"、"そら"、"やま" がたゆやかな時間で繋がる、貴重な棚田のパノラマを有す贅沢な時間と場所。

岩首の夕暮れ時の景観を目にした時、初めての景色なのに懐かしさと優しくも生命の力強さを見せつけられ、脈々と流れる日本の静かな鼓動を肌の下に感じました。時と自然、そしてそこで暮す人が共存し共鳴して成り立つ景観は、この地球の上で人間が活かされて来た証しでもあるようでした。人間の都合で掃き捨てて来た大事なもの、それは日本人の共有財産である景色だったということを改めて岩首の景観が示唆してくれました。

時間が築き上げてくれた岩首の「時の記念」− 岩首談義所

廃校をよみがえらせた「岩首談義所」プロジェクト

佐渡島 岩首 廃校を再生した「談義所」

少子化に伴い、佐渡島も小中学校の統廃合数は年々、その数を増しています。この岩首で100年以上の歴史を持ちながら2007年3月に廃校になった旧岩首小学校舎を地元のわずかな有志たちがその保存を佐渡市に働きかけ、3年の期限付きで集落に無償貸与されました。

談義所の校内 廃校を再利用

今では、大学の研究員などが地域活性モデルとして岩首談義所を視察に訪れたり、全国の廃校活性におけるモデルケースとしても注目を集めています。なんと佐渡市の決議からわずか3ヶ月で岩首談義所を立ちあげたそうで、中心となって活動された元佐渡市議員の大石さんは当時の様子を校内をまわりながら話してくれました。

当初は廃校に関して村でも意見は分かれ、維持管理の側面や費用などの問題などもあり、多くの方の理解を得る事は困難な状況でした。

岩首談義所 体育館大石さんはこの岩首小学校の卒業生で、岩首で産まれ育ちこの土地の時間を共有し生きてきました。一時は佐渡島を離れ東京で働き、その後この故郷に戻ると、岩首の景色と文化は、お金にはかえがたい有形、無形財産である事に気づいたそうです。また、その時間が築き上げたものが簡単に掃き捨てられていく現状に深い疑問を感じたのが一つのきっかけとなり、このプロジェクトを考え出したそうです。そうしてその思いに共鳴する水面の波のように集落から佐渡市へ、そして大学や民間団体へと広がり、短期間でこの「岩首談義所」プロジェクトが始動することができたそうです。

現在では集落の方の理解も得られ、岩首のまちのシンボル的な存在にもなりつつあります。施設は宿泊施設として寝具利用料(1人1,500円)で宿泊もできます。また炊事場を利用して自炊も可能です。実際に泊まらせてもらいましたが、当時のままの内装を活かし、何とも懐かしくぬくもりを感じさせる空間はタイムスリップした気分にさせてくれます。まるで今にでも子供の元気な声が聴こえて来そうな雰囲気は、時間が築き上げてきた「時の記念」です。

「豊かな時代」を駆抜けた後に残るもの

私たち日本人は本当の豊かさを何に求めてきたのでしょうか。経済成長を駆け上がり、峠を下り出すと、そこはものと情報が混沌と溢れ出した中で生活させられていることに気づきます。そして、新たな価値の導入のあとには、古くなったものを安易に破棄していくことにいつしか慣れてしまった自分も存在します。破棄することは誰でもできます。しかし、維持することは時として時間と労力、そして経済的な負荷を伴います。問題は何を許容し未来に残していくか判別する思考と行動。時と人が築き上げた「文化」は共有の遺産でもあり捨去るのではなく活かし再生するという「豊かな」知恵を、この校舎は伝えてくれる象徴のように、雨の中をたたずんでいました。

温故知新と言ってしまえばそうなのですが、実際に情熱を持って行動をおこし世の中を静かに動かす大石さん、そしてその有志の方々に深く共感しました。なによりも、この佐渡島の岩首に流れる時は何ものにもかえ難いやすらぎの旋律を奏でていました。

変わらぬ時を奏でる人々

「縁」を生み出す岩首の大地

佐渡島 岩首 素晴らしき人々

今回は佐渡観光協会の主催する農水産業のワーキングホリデーに参加するため佐渡島に来ましたが、その企画自体は始まったばかりで担当者も手配の段取りが思うようにいかず、しかしながら島の方々はこの旅人をおおらかに受け入れてくれました。

特にこの岩首の土地では、さまざまな縁をみなさんに与えて貰いました。人は何か行動を起こす時に人との関係性のなかで多くの事を学び、そして縁が育まれて行くことを改めて実感させてくれたのがこの佐渡の岩首の人々、そして、この景色でした。

佐渡島 岩首 佐藤半四郎さん

「のらくり」新企画、「ニッポン遺産積立:みらいバンク」の第一回目、残し伝えたいニッポン遺産に佐渡島の岩首を未来へ、"縁"積立します。

大石家のおばあちゃん 佐渡島 妙宣寺

この記事を読んで下さった方に、いつかこころに縁の利息がうまれることを祈りつつ、機会があれば佐渡島の岩首に訪れてみたらいかがでしょうか。佐渡島は離島ですが以外とアクセスは良いいです。

新潟港から佐渡島行きのフェリーは閑散期の冬場でも朝6時から夜19時まで一時間に約一本は出航しています。メインの港、両津港から岩首までは車で50分、路線バスで90分。談義所は"岩首"バス停から歩いて3分の所にあります。観光ガイドブックに乗っていないニッポンの名所、「のらくり」認定第一号の岩首、その時間が奏でる雰囲気と景観、そしてそこの人々はニッポン遺産です。
●てくてく岩首まっぷ(PDF:949KB)

てくてく岩首まっぷ(表紙)
【連絡先&アクセス】
佐渡観光協会H.P. E-mail:info@visitsado.com
●岩首情報サイト岩首棚田・とき共生みらい通信
・車:
両津港から県道45号線(佐渡一周線を小木方面)で約50分
小木港から県道45号線(佐渡一周線を両津方面)で約45分
・路線バス:
両津港より新潟交通 東海岸線(多田方面)で約90分、岩首バス停を下車
新潟交通H.P.Tel.0259-57-2121
佐渡汽船H.P.Tel.025-245-1234
                
  

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